とまる

夜の風は
昼間に吹くそれとは異質だ
不穏だし、モノクロだし
音だっていつもより大きく響く
商店街のシャッターも揺れる
車の音もかき消される
落ち葉の行方もわからない
目的もないまま
毎晩眠りについているということが
どこかでもどかしく
それなのに朝になると
眠りへの欲求以外はないという
窓の向こうの世界には
見知らぬ誰かの空き缶が転がり
知ってはいるが区別のつかない猫が歩く
夜の風が吹く
まだ見ぬ選択肢の前で右往左往する僕は
孤独な案山子で
着古した服のポケットには
使うあてのない大量の紙幣が入っている
未だ目的のないまま
にこやかにいよう
だなんて思っては泣いた
必要な数だけ泣いた