月別アーカイブ: 2019年4月

わたしはまだ、名前すら名乗れていない。

例えば昨日
何者にもなれなかった
人々が昼食をとる頃に起きて
人々が帰宅し始める前にビールを飲んだ
苦くて苦くて
少しアルコールの高い
インドへ持っていくために作られたとされるもの
何者にもなれなかった者は
雑多な駅のホームの階段を上る手前で
涙を流した
意味もなく作られた
救いの言葉のポスターを見て
草臥れた鞄を持ったサラリーマンを見て
偽物の爪とまつ毛をつけた女を見て
直ちに引き返すべきだった
止まらない鼓動を
明日への活力にすべきだった
白のスニーカーが汚れてくすんでいる
帰ったら洗おう
小学生の頃に洗った上履きみたいに
帰ったら洗おう
髪も頬も足も腕も
追い越し追い越されていく毎日も
わたしはまだ、名前すら名乗れていない。