月別アーカイブ: 2017年2月

夜毎ぼんやりとアイス

夜毎ぼんやりした

正直云って
コーラがただの飴色した液体になるまで

わたしのまわりの
木々がざわついている

此処は日本ではないのに
窓の向こうだけ
外国みたいな気分になる

この部屋だけは
パスポートいらず

やたらと分厚い
アパートの壁を隔てて向こう側に
わたしは真夜中
一歩を踏み出した

時間はわすれた
見ていないから

ダウンジャケットに手を突っ込み
毛糸の帽子をかぶって
一駅むこうのガソリンスタンドまで

いくつかの家の窓から漏れる光と
等間隔の街灯以外
ほとんどの灯りは存在しなかった

パン屋もスーパーも
レストランもカフェも
わたしが立ち寄れる場所ではなかった

ガソリンスタンドの売店で
ハーゲンダッツを買った

ふてふてと歩く
わたしの足音と
冷たいハーゲンダッツ

分厚い壁の向こう側にある
わたしの部屋には
夜毎ぼんやりするわたしがいて

いまのわたしは
真冬の真夜中の遠い国で
世界的なアイスを握りしめる

冷たいのは局所的だ