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見下ろす夜

隣にいる
女を抱きたいとおもう
でもきっと叶わないから
それならいっそ
この水を思い切りかけてみたらどうか
突然のことに女は困惑し
そして恐怖を感じ
その場を立ち去るかもしれない
でもきっとその前に
僕は我に返り
女に謝罪するかもしれない
そうすると女は
憤慨して僕を吊るし上げるだろう
店員に報告し
店員が警察を呼び
僕に残される道は
必死に謝るしか
正当な道は残されていない

このコーヒーショップに入ったとき
僕は窓際の一番角の席が空けばいいのに
と思った
髪の毛をやたらと指先で弄び
時折甲高い声で笑う女ふたり
ショーケースに並んだ菓子を
一通りたべたいと思いながら
注文の順番がくると
さっき見ていた菓子を
見ていなかったことにするように
カプチーノだけを注文した

窓の向こうには
瞬くような夜が広がり
上質な衣服を纏いながら
大人たちが歩いていく
ネットニュースに正義を感じ
あらゆるコメンテーターの言葉を知り
あらゆる言葉を正面から捉え
そしてあらゆる正義を見逃さない
赤信号にクラクションが響く
赤色灯が乱反射する
あらゆる速度を追い越すように
タクシーの渦が広がっていく
道に溜まった落ち葉に
通りすがりの煙草が吸い込まれていく

僕の右手には
飲みかけのカプチーノ
それから
欠けていく月
コーヒーショップの店員の
快活なアナウンスが
一番正しい