わたしのぜんぶ

群れることがきらい。
ひとりでいることもきらい。

赤ワインと白ワインで悩んだ夜。
べつに、どっちでもよかった。

油断すると怪我するよ。
買ったばかりのナイフのように、
手に馴染まないから。

髪が視界を邪魔するのはいや。
美しくないのはもっといや。

サンドイッチの食べる順番を気にして、
味なんてそっちのけ。

甘やかさないでくれる。
でもほっとかないで。
どこにもいきたくない。
だれにもあいたくない。

日がな一日散歩していたい。
本も読んでいたい。
ランチも、カフェも、日だまりも、
猫も、犬も、鳥も、
屋根も、ベランダも、公園も、駅前も、
ひとりも、ふたりも、ふくすうも、ひとりも、

ぜんぶしたい。

適当に美しく。
ふと気づいてくれるくらいにさみしく。
それでいて、強く明るく。

わたしはわたしの一部で、ぜんぶ。

だれにも邪魔されずに。
だれにも怒られずに。

でも、どうして。
自分の見られることのない部分で、
泣いてしまう。

放たれたい
空まで。

感じたい
雲まで。

わたしはわたしのぜんぶで、一部。

遠くでだれか泣いている。
遠くでだれか呼んでいる。

わたしはただ、
わたしを知りたいだけ。
ただ、それだけ。

わたしはわたしの一部で、
ぜんぶになろうとしている。

あ、見えない鳥が
ぴーちくぱーちく、啼いている。