置いてけぼり

誰もわたしを守ってくれないと泣いた夜
世界の要人たちはワインを飲み
軽く頭を悩ませては
髭がある者は髭を撫でて
眼鏡をかけた者は眼鏡を持ち上げ
髭も眼鏡もない者は鼻をかいた
わたしの家は高級なマンションではないから
部屋の温度は一定ではないし
もちろんエレベーターだってない
ホームアローンのようにピザだって頼めない
気がついたら朝だったということもある
ニワトリの鳴き声は正確ではあるけれど
そしてある日わたしは人のものを奪い
わたしの欠片を土に埋めた
誰もいないはずの部屋に
わたしが眠っていた
誰にも会うこともなく
どこかへ行くこともなく
忘却することもなく
ただ泣いているわたしは
わたしでしかなかったから
昨日とは数センチ違う世界が
始まろうとしていることに
気がつかずにいる