憂いているわけでもなく
喜々としているわけでもなく
目の前の甘みだけを求めた
香る甘みを求めた
それは文字を飛び越え
思考を包み込んだ
わずか1メートルほどの距離から
性欲だけに満ちた会話がきこえる
肩が出たニット
もじゃもじゃとした髪の毛
網タイツ
丸眼鏡
語られる政治
通り過ぎる香味
ネット批判
現実的な考え
滑り出し止まらない
すべての言葉の群れが
目を見開き
口を開け
モノクロームのなかで
必死に色彩を放つ
もう少し赤い口紅にすればいいのに
そんなことを思いながら
数十の頁を飲み込む
甘みは消え
雨だけが頬に触れた
味のない時間が過ぎようとしている