つづく

そして、僕らは挨拶をした。
右手を差し出し、目を見つめてがっちりと握った。
おはよう、でもなく
こんにちは、でもなく
こんばんは、でもなかった。
やあ、ただそれだけだった。
やあ、で始まり
それからは特になにもなかった。
興味がわくこともなく、質問することなんてもちろんない。
もう少し若ければ、あるいはもう少し年をとっていれば、質問をすることもあったかもしれない。
現実は淡々としている。
時間通りだ。
僕らは帰り際にまた
やあ、と言って握手をして別れた。
人々は街に酔い、光に踊り、空気を噛む。
僕はそのすべてを避けるようにして家へ帰った。
それから、酒を飲みなおしながら
読みかけの小説を読んだ。
数行読むと、すぐに眠気が訪れた。
そして、僕はおやすみを言った。
夜の木々に吸い込まれていくように
僕の声はゆらゆらと消えていった。
息を吐く間もなく。