文字にまぎれて

左頬を
つるりとつたって落ちた
少し酸っぱいにおいがした

だからといって
ぼくが
(意識というか肉体として)
どうするかというのは
また別の話のような気がした。

神のみぞ知る
といえばおさまるかどうかは
まったく関係ないのだけれど。

文字が深々と侵略して
浅く意識を目覚めさせるとき
軽く時間軸は歪む。

ファンヒーターは空気がよごれる
といわれても
例年よりなんとかだから
といわれても
半音あげる意味なんて
わかりはしない
(それが不明な比喩なら尚更)

夕飯に
焼き魚をたべた事実のほうが
よほど生々しい。

左頬は
あるいは幻かもしれない
だけれど
肉体はおそらく正直に
認識しているのだという。

雨が
降らないせいだ。