路地のなかで

この路地に続く電線や電柱の群れ
歩いて進む先に不規則が規則的に並んで
風が通り抜けるたびに
それらは震えるのだけれど
ぼくの指もまた震えていて
工事現場の鉄パイプが転がる音を
教会の鐘の音と勘違いして
でもあそこには
電線や電柱はないわけで
今はスーパーマーケットからの帰りで
三つ入りのパプリカのひとつが
傷んでいるような気がして
だけれどそのパプリカは
一番大きくて鮮やかで
単純にそれが欲しかっただけなのだぼくは
路地の角にある古家のまえで
見上げた空には
電線や電柱が覆っていて
当たり前に驚いて
驚いて立ち止まり
真上にもそれらは居たのだ
それが事実のようだって