何年まえ

オイルヒーターの震えが
ぼくの呼吸と重なりはじめているとき
うっかり日付をまたいだ
分厚い壁と窓ガラスのおかげで
氷点下には触れずに済んでいる
電気スタンドの電球がきれそうだ
小さな冷蔵庫には牛乳があるだけ
楽しみは朝一番のパン屋で
地下鉄の駅をひと駅ほど歩くとある
小さなパン屋
こんなにも曖昧な記憶でも
きっと買い物くらいはできるはず
オイルヒーターの音が近くなっていく
電気スタンドの電球の点滅に合わせて
瞼が閉じていく
果たして夢のつづきだろうか
はたまた時差ボケなのだろうか
重く冷たい冬に触れて
何年もまえへ行ってしまう
そのあと此処へ帰ってきて
アイスワインでも飲もうじゃないか