零れ桜

小川のほとりを歩きながら
水面に反射する
陽の光に目を細め
なんとも美しいひとときだと
歩みの幅を狭めるのでした
わたしの隣を歩く人物はいません
いまのところというのは言い訳
歩みの速度が合わないのだから
半ばあきらめがちに空を仰ぎます
依然として輝く陽
零れ桜が頬をかすめ
ひらひらと川に落ちていきます
散っても尚美しく
舞っている姿も尚美しく
その数が水面に万遍なく漂えば
花筏が尚美しくなる
わたしはこの時を素晴らしく思う
そしてこの国を美しく思う
小川のほとりを歩きながら
すれ違う幾人かの人々
自転車をこぐ小学生
老夫婦の散歩姿
赤ん坊と母親
風が空高くから
過ぎ去っていく
それぞれの歩みのなかで
空を見上げる季節
この場に寝転がり
零れ桜をもう少し浴びていたい
輝く水面に映る
わたしと花影