最近の彼女

土曜日。
ピンヒールを履いて街に出た。
気持ちのいい青空。
厄介事は彼女の頭にはない。
コーヒーショップに入り、サンドウィッチとカプチーノ。
ひとしきり本に夢中。
小説のタイトルは「爽やかな午後は不規則な現を」。

日曜日。
夜中に眠ったこともあって、目覚めは遅い。
時刻は9:30。
目をこすりながら洗濯機を回す。
朝食は小倉トーストもしくはフルーツヨーグルト。
窓をがらがら引くと冷やりとする風。
テレビは休日の色とりどりを映す。

月曜日。
きっかけを探していた。
無口で出勤、無表情でパソコン。
空は切り取られている。
夜のバスタブを思い出す。
自己投影、自己実現、自己犠牲、自己嫌悪。
人の顔が目の前で容れ物に変わる。

ある午後。
彼女は草原へ出掛けた。
いつもひとりだったから。
真っ白のスニーカーを履いて、真っ黒の帽子をかぶって。
雲は立体を尊厳していた。
小説に集中するまえに、雨の予感。
洗濯物はだいじょうぶかしら。

ある夜。
雨は窓を濡らしている。
近所のネコも隣の鼻歌もかき消した。
足下に転がる選択肢。
非日常を淘汰するべく、日常を鈍化するべく。
ことばをナミダに変えた。
成り立たない日もあるのだ。

金曜日。
ある程度、大体は、週末を控えている。
答えは見つからなかった。
見つけようもなかった。
疑問に疑問符が相応しくなかったようで。
本当の終わりは終わりのあとにやってくる。
駅のホームに電車を迎えるアナウンス。

また、はじまっていく。