鱗雲

もうすぐ終わる
固定された一日が終わる
雲は流れてしまったらしい
目に見えない速度で流れてしまったらしい
ここでは時間の進みかたが
そちらとは異なっている
手を伸ばせば触れられる距離にいて
寒さで震える肩を抱こうと思って
やっぱりやめた昨日
忙しない少年少女を傍目に
しかし同じものを見つめることに
どこか嬉しくもあった昨日
目の前や横を過ぎていく車たちが
いつもより速く感じる
あのさ、これからさ、
と云いきるまえに
時間が遠ざかっていく気がした
さっきまでの秋の色が
木々から消えてなくなり
また一層寒くさみしく感じられる夜を
ぼくとあなたで迎えにいく
たぶん、おそらく、
と云いながら止まることのない高揚に
満ち足りて息をのみ
空気が留まる感覚を共有しながら
ぼくの、あなたの
言葉になっていくのだと