ぬるい匂い

季節が端に寄った
終わりのころの哀愁か
始まりのときの戸惑いか
赤のなかに葉が混じり
蟻の行進生々しい
襟元をぬるい匂いが
するりと入り
風が吹いたと
感じて云った
季節が端から端へ
寄っていったのと同時期に
花が咲いたり
夜が去ったり
朝が伸びたり
葉が散ったり
変化のなかを歩いているのに
声に出してみること
数十秒
蜂はぶんぶん
飛ぶのでした
ぬるい匂いの
数十秒
それが風だと
気付くのでした