本能

眠るまえに眠る
まだ虫たちの合唱が止まないころ

飲みかけの珈琲を
半分だけ残したまま
幼く怖い夢をみた

眠るまえに眠る
そのことによって
考えが真っ直ぐになり

学歴や見てくれが
巨大な球になって
やわらかく私を包み込む

現実の一切合切を
切り離して遮断して
向かってくるすべての
過去や未来の映像
もしくはそれに類似する
記憶や心の声を
遠ざけて固めた

眠るまえに眠る
そのことが

本能の端を
そろそろと歩かせるのだった