本能 眠るまえに眠る まだ虫たちの合唱が止まないころ 飲みかけの珈琲を 半分だけ残したまま 幼く怖い夢をみた 眠るまえに眠る そのことによって 考えが真っ直ぐになり 学歴や見てくれが 巨大な球になって やわらかく私を包み込む 現実の一切合切を 切り離して遮断して 向かってくるすべての 過去や未来の映像 もしくはそれに類似する 記憶や心の声を 遠ざけて固めた 眠るまえに眠る そのことが 本能の端を そろそろと歩かせるのだった