長いお別れ

さよならを云い忘れた

いいや、云い忘れたわけではない

云えなかっただけだ

ここには深く小さな違いがある

本のページは開かれた

図書館の廊下の隅で

コインロッカーに入れ損ねた分厚い本

乾いた音だけが廊下に響く

最後に口づけをしたあの日

君は真っ赤な顔をして

なにかの決断を下したときのような表情を

涙の端に秘めていた

知らせたかったのか

知りすぎていたのか

それは気が遠くなるほどに

長い長い

確かな物語

ロンググッドバイが

重く閉ざされている