月別アーカイブ: 2018年2月

荒野にて

わたしの彼は
あなたの恋人
ぼくの彼女も
あなたの恋人で
わたしは結局
だれのものかと
親兄弟に訊いてみたけど
馬鹿か阿呆かと
云われた挙げ句に
猫に鳴かれて
烏に蹴飛ばされる
わいわいがやがやしている食堂に
文庫本を持ち込んだのが失敗だから
缶ビールくらい飲んでもいい
通過点を通過するだけの
そんじょそこらの生き道よりも
通過点に足踏みするような
ややこしさも或いは必要で
わたしの彼は
あなたの友人で
ぼくの彼女も
あなたの友人だったから
此処が天国でも
彼処は地獄かもしれない不思議
くつろいだTシャツに
よぼよぼの脳みそ
せめて目ん玉だけは
青く深く澄ましていたいと
ありったけの荒野で
草花を見つめた