海岸の少女

海岸を歩く少女を知らない
砂に埋もれていく少女の悲しみも
海鳥の鳴く長く遠い空も
道をいくオープンカーも
なにひとつ知らないまま

足を放り出し
砂浜を駆け
腕を広げ
今日初めてみた空を仰ぐ

届きそうな
いくつもの出来事を
目の端でとらえては
砂に泪を落としていく

海岸の少女はいつしか
街中を行く女性になり
知らないことなどなにもなくなり
それでも少女だった頃を忘れずに

海岸を歩く少女の面影を
海沿いのカフェの窓から眺め
ただの一日を託す
夕暮れが雨を乾かしていく