逆さまの昼下がり

だれもいない街路樹の下で
冬が深まっていく
欲望は封を切り
概念は簡略化していく

休日のまえ
ガスコンロで沸騰する薬缶に
徐々になくなっていく苛立
時間を止めると
呼吸が止まり
人類はいなくなった

逆さまの昼下がり
きっと幸福に違いない
大きなブランコに乗りたい
絵の中の噴水を浴びたい
とりとめのない言葉を
彼女は日常に変えてくれる

だれもいない交差点の中央
だれもしらない公園のベンチ
なにもない高層ビルの一部
なにもおきないテレビの討論

訪れた休日
ハンバーガーをほおばってみる
時間が進めば
人を忘れていくのだ
時間の先にも後にも
たぶん僕はいない

鳩が足を長くして
くるっぽーくるっぽーと
なにくわぬ顔で
時を進めていく
少しづつもどりながら