愛しい人

昔と今は当然のごとく違いを見せ合うが、今とこの一瞬を競い合うのはどこか歪みが生じる。
さらば愛しい人。
テレビでは顔と名前しか知らぬ人が、愛を囁いたり、愛を語らったりしている。

物事は一瞬一瞬、間が生まれ、埋もれ、無くされていく。

さらば愛しい人。
水分と呼吸が間に合わない。僕のなかの共有情報にすべて任せればいい。

一体なにを云いたかったのか、きらめきすぎて、ためらいすぎて、おいつかない。
僕自身ということではなく、僕自身だったとして。
切り取った文字間隔に託してみるが、さあどうだろう。と溜め息が漏れるような気がして、眉間に皺を寄せてみる。
あのときとは違った体重の減り方をして、またひとつ生まれようとしている。

それが僕自身だったとして。