遠い日のチェロの音色を越えて

まだちゃんと笑えてなかった

まだちゃんと泣けてなかった

背けて遠ざけて

忘れて思い出して

ただの気持ちの変化を

必ずのものと過信して

まだちゃんと止まれてなかった

まだちゃんと進めてなかった

もちろん今だって

呼吸も乱れたり汗が溢れたりする

だけれどちゃんと

過去を過去として捉えられた気がする

いつだってどんなときだって

わたしはあなたを愛していたのだから

やっとチェロの音色が耳に届く

いくつかの遠い日を越えて

だれに云うのでもなく

だれに問うのでもなく

わたしの語りとして

あなたで始まり

あなたで終われた

こんなに幸せなことはない

そんなふうに思えた