わたしの憂鬱は
凍った水道管とともに
止まったままだった
あの日
あなたは旅館の浴衣を着て
頬を寄せて笑っていた
たとえ行ったことのない場所へ
飛行機を使って行ってみたとしても
車の下で屯する野良の猫が増えるだけだった
あの日
わたしは砂まみれの子
憂鬱もいちごミルクと同じ味
明くる日
凍った水道管から出た最初の水は
紅く染まった液体だった
水道の蛇口をひねり
紅く流れる液体を眺めながら
無益な愛の色と名付けてみた
カップ麺を沸かすだけの水を
薬缶にいれて
一日を過ごすことも生活というらしい