曇った眼鏡を拭いた
息を吹きかけて
よく晴れていた日
ペンキの剥がれたベンチに座り
一日の一秒が行ったり来たりしている
映画館までの道のりを
実はよく覚えていない
気がついたらそこに
いたらしい
アイスコーヒーの
最後のひとくちまでも
まとわりついて
台詞の欠片さえもまだ
君自身のよう
途方もなく
思いがけず
あてどなく
愛おしいと
見知らぬ僕に語りかけたまま
宵の合図に
街灯が端から灯っていく
立ち止まることもなく
いつかまでも
それさえもまだ
こともなく
未だ微笑んだまま