池のほとり

円のなかに
いたはずだった
きみはいつしか
ひとり歩き出して
公園を横切り
信号を守り
鳥たちに目配せをして
池のほとりのベンチで
本を読んでいた
言葉が物語を教えてくれるような
あたたかな小説を
記録的な猛暑に
記憶すら飛ばされながら
いつのまにかうたた寝し
汗をぬぐって
唄いきった
在り来たりで
孤独な温度の
恋するような
日々のこと
夢でも現でもなく
目を閉じれば
きっと明日だ
きみはまた
ひとり歩き出して
池のほとりのベンチで
本を読んでいる
元気のかけらみたいな
はつらつとしたエッセイを
鳥たちは笑った