ゆっくり歩いて帰ったつもりだったのに
家につくと少し息があがっていた
思い出す思い出は
いつも一定の量で
いつも一定の温度だけど
都会にいるとそれが
偽物か本物か見分けがつかなくなる
窓から見えるのは屋根ばかり
聞こえる音は人工的
暑さをしのぐ風も
寒さをしのぐ熱も
言葉も欲望も
愛も孤独も
すべて目の前でつくられていく
昨夜の焼き鳥屋が
唯一救いのような気がする
煙と汗と
それから喧噪
日々の変化を見逃すべきではない
たとえそれが
同じ太陽に見えたとしても
窓の向こうから
明日がやってくる
夜風が
さらさらと音をたてて
顔を撫でていく
常に生まれ変わる毎日に
息切れしている時間はない
感慨深く
過ちを甘噛みする