幸福と降伏は同音

街の中華屋で
君に関するあれこれを思い出していた

床の温度とか
ドアの音とか
窓から見える屋根とか
陽の差し込む色合いとか

見ていたのは君ではなかった
記憶はいくつかの色で塗り替えられていく
まるでピカソの絵が眠っているかのように

そして今思い出されるのは
中華屋の少しへこんだ薬缶で

唇がひりひりするのは
口づけたからではなくて
山椒のせいだった

中華屋の床は少しべとついていた