帰宅時間帯 右足を踏み込んでいるだけで 時間をとばしていける 風が稲穂を撫でてから 自動販売機の ダイドードリンコの文字にぶつかる ある人は東へ向かって 南の空から西の空へ ある人は北へ向かって 西の空は次第に燃え上がり 烏はときおり カッコウと鳴いていた 散歩する犬は あくびをこらえて すべてが燃え上がり消えていく その瞬間 なにもかもが停止する サイレンでさえも 赤ん坊の泣き声でさえも つまり 同僚の顔をもう思い出せない