うたたね

一日のおわりに
紙に包まれた
パウンドケーキの最後の一切れを
ごそごそと開けて
音のしない部屋で
ひとりたべた
甘くておいしいのに
たべたくてたべているのに
自分の中の大切ななにかが
溶け出してしまっているような
惨めさを感じた
だれかの声が聞きたい
自分のためだけの声が聞きたい
ボタンを押して電子音に逃れ
少しだけ目を閉じたら
一日は一瞬で閉じていった
かじりかけのパウンドケーキを残して