夜に明かりが灯る世界

ここらへんの
だれもが知らないところまで
きみを連れ出したい
騒がしい世界だから
たとえ石につまづいても
走って歩いて
たとえ世界が滅ぼうとも
シャツとズボンがあるから
知らない人にも挨拶できる

電車で数十分を
何度か
それでも人は人々していて
どんどん森が
森として定着するなかで
意識だけが風に舞う
ベビーカーはゆるやかに
キャッチボールは止まることがない
解けた靴ひもを
結び直しているうちも
柴犬はどこへも行かない

スイッチひとつで
夜に明かりが灯る世界に
ペットボトルの紅茶がよく似合う
さようならはまだ
別れの言葉にならないから
さようならもまた
いいことばかりの慰めだった

ここらへんの
だれもが知らないところまで
きみを連れ出して
静かな世界で僕は
号泣したい