月別アーカイブ: 2018年1月

ひとり歩き

長くひとりで歩いていると
じぶんの呼吸だけが響いてきて
そのうち街路樹と囁き合うようになってくる
車の音が止まり
人の動きが止まり
砂糖を買いにいっただけなのに
さようならが反響する
ここが前世でも来世でも
流されていく時間に抗えない
黙っていれば誰も
気がつかないし傷つかないのに
長くひとりで歩いていると
じぶんの呼吸だけがやたらと大きくて
そのうち見知らぬビルばかりになる
あのとき此処は砂漠だっただろうか
見知らぬ少女が手招きしている
今はいないひとつ前の名前
かなしみの歩幅を知りはじめたところに
降る雨の鼓動
長くひとりで歩いていると
濡れることにも躊躇いはなかった