恋人の名前を
呼ぶことはあっても
書くことはなかった

雨に
濡れることはあっても
ふれることはなかった

愛を
聞くことはあっても
語ることはなかった

街を
通ることはあっても
眺めることはなかった

風に
吹かれることはあっても
感じることはなかった

郵便ポストが
錆びていく

窓ガラスが
透明になっていく

いまが
過ぎ去ることはあっても
留まることはなかった