遠くに見える

あなたの一部を爪で剥ぎ取って
そっと舌先に乗せる
わずかに残る甘みに
わたしは思わず恍惚としてしまう
流れ出る音の渦と
むせ返るほどの熱気に
わたしは現実をしばし忘れていく
甘みはわずかな苦みを伴いながら酸へと移行する
これからはじまる
現実だけの一日を
やり過ごす方法をまずは模索し
わたしの一部をそっと地面に落とす
気づかれないように下唇を噛み締めながら
わたしの鼓動は不安定に震えている
なお遠くに見えるわたしにむかって
苛立をためこんでいる