最遠の月

校庭で
球体を転がし
砂にまみれて笑う
ときに甲高い声を発し

何処かで
知らない誰かが
慣れない酒を飲んでいるときに

校庭の上に
ぽっかりとあいた空のなか
雲に守られるように
月が現れる

ふと、意味もなく
人にあいたいと思う
ことばを交わすことのできる人に

最も遠い月をみながら
遠くの国のことを考える
なんの関連もないというのに
幾許かの想いを巡らせる

降り注ぐ光と
細かく舞う砂埃に
乱れながら映る月を
ひとつにしようと
目を細める

からだと声が
分離していかないように
善と悪が
反転しないように

最も遠い場所で
球体を転がしている