立夏

大勢で泣く
海岸で

押し寄せた波に
抗うことなく
無抵抗に
泣く

集めた貝殻を
右手で
強く握りしめた
そのせいで
流れる

これを流血というのだと
母はおしえてくれた

海岸で
立ったまま
ただそのまま
大勢で泣く

わたしは
海岸に立ち
貝殻を握り
流血し
ひとりだけれど

このわたしの
なみだは
だれかのなみだと
等しい
きっと

泣きながら
波に引っ張られないように
風にさらわれないように

さらに強く
わたしは
大勢で泣いた