冬眠前にステーキを

穴のなかに潜り込んでいくみたいに
深く眠りたい
でも
夜が白んでくるまで起きていたい

そんなとき
濃くて熱くて
苦くて重い珈琲が飲みたくなる

どこかに行きたいけれど
だれかに逢いたいけれど

場所も人もわからず
夜の音が
耳の奥に響いて

石油ストーヴが
からからとよからぬ音たてても
夜はそのまま音を出し続けていく

痛みのない痛みが
僕の真ん中の左側を
垂直に刺激していく

もう少ししたら
眠りが
順番にひとつずつやってくる

その前に
分厚いステーキに
マッシュルームスープ
それと赤ワイン

たべたいかどうかは別にして
それがカタチとして必要なのだ