歯磨き

ハンガーに
ツイードのジャケットと
ステンカラーコートと
分厚いカーディガンが
仲良くかかっていて
ぼくは
ああ、これで十分だ
満ち足りている
と思った
大きなイチゴのケーキも
上質な脂の牛肉も
温度が常に一定に保たれている部屋も
特に必要なかった
ただ
きょうのような
印のない一日にも
ぼくは
歯を磨いた
なるべく念入りに
たぶんそれは
あしたに繋がる