ディナー ふいにかきあげた髪から みえるひとつの耳が とても小さくて美しく ぼくは 素敵だ。と呟いた 口元のオリーブオイルを拭って 傾けたワイングラスを ぼくはただ見つめながら 彼女はわずかに口元をゆるめた 清潔なテーブルクロスの上で あまりに無防備で あまりに静かだった それからあまり記憶はないけれど 家の洗濯物が やたらと気になりはじめ 美しい耳と口元だけが 頭のなかで繰り返されている