ディナー

ふいにかきあげた髪から
みえるひとつの耳が
とても小さくて美しく
ぼくは
素敵だ。と呟いた

口元のオリーブオイルを拭って
傾けたワイングラスを
ぼくはただ見つめながら
彼女はわずかに口元をゆるめた

清潔なテーブルクロスの上で
あまりに無防備で
あまりに静かだった

それからあまり記憶はないけれど
家の洗濯物が
やたらと気になりはじめ
美しい耳と口元だけが
頭のなかで繰り返されている