喫茶席 向かいの席に座る 人差し指と中指に挟まれた 細長い煙草を ぼくは取り 口に含み 転がして ひゅっと吐き出した 真っ赤な口紅の端がわずかにあがる 香水が鼻先をかすめ 煙草を向かいの席に座る 人差し指と中指に戻す 乾いたサンドイッチと 冷めた珈琲の上を 言葉のない会話が 繰り返される 時間が足踏みしているみたいにして ぼくはそっと笑った 何処かへ行く予定もなく 夕暮れをそっと待つ