ひとりの息

あの雲の上にみえる
山の頂上に
彼女はきっといる
少し胸を張って
かなしみの鳥は鳴かない
体裁の花は咲かない

今朝の白湯は苦かった
窓に浮かぶ空はくすんでいた
枕は高く偏り
テレビのリモコンは消えた

西の空から次第に
東へと明るく伸びていく
独立した意識が
黄昏に染まっているとして
彼女は名前を変えて
立ち位置をずらして
あっという間にコトバにする

あの雲の上にみえる
山の頂上に
彼女はきっといる