静かに目を閉じる人

青色のターバンを巻いて
そこから出た
おでこにぴたりと
手を当てた。

彼女は笑顔で
でも涙をひとつ落とした。

記憶は徐々に薄れていく
インターネットで(それはスマートフォンで)
求めるが故に
失い始める
些細な静寂。

彼女は部屋で
よく音楽だけをかけていた。

泣いたのはたぶん
一度きりだった
二度目はとても遠かったし
三度目はもう見えなかったから。

彼女は森で
目を静かに閉じることのできる人。

僕は
歩道橋で
駅のベンチで
海の見える丘で
彼女みたいに目を閉じようとしている。

少し風が
やわらかくなった。