嗚呼

わたしの手がチョコレイトをつかむまでの間、
テレビはにこやかにしていました。
音量はわりと大きく、いやわたしの耳が平均だなんてきいたことないけれど。
きいたのかもしれないけれど、わたしの脳がそれを記憶していればの話で
やはりテレビはそれでいてもにこやかでした。
わたしは常に膝を抱えているつもりです。
その状態から手を伸ばしたり、相づちをうったり、あるいはうたなかったり、うなだれたり、ああ!といったり、していて
本日、透明な受話器に向かって無言で、ああ!といいました。
それで、たまたまマーライオンのチョコレイトがあってそれが
不格好でとてもよかった。
そうですね。
テレビはいまジャングルへ向かったみたいだった。
ああ、嗚呼、ああ。
チョコレイトはわたしの手に張りついた。
抗いもせず、流されもせず。