静けさの中で

どうでもいいことが

雑多な音に紛れて乱れて

ぼくのおなかを

ちくちくさせる

本は文字を抱えたまま

湿気を適度に含みつつ

積み上げられて

やがて強めの太陽光を浴びて

乾いて浮かび上がっていく

それをかつての新人類が拾い集め

博物館に飾るのだ

博物館に入るには八百円くらいしますが

それは百円玉を八枚渡すということだけど

なぜかハンバーガーとか

アルコールとかと比べられてしまう

とにかく

積み上げられた本のなかの文字が

乾いて浮かび上がって

博物館に飾られてしまう前に

ぼくは月夜を泳がなければならない

うっすらと浮かぶ雲に寄りかかって

街を眺めるのだ

どうでもいいことが

輪になっていく

ドーナツ屋の

ドーナツの一部に変わっていく

穴の向こうに

昨日とよく似た一日がある

そしてそこにぼくに似たひとがいて

どうでもいいこと

という看板がぶら下がっている

森の向こうは森です

という案内標識とともに

ふと気がつくと

音は止まり

静けさの中で立ちすくんでいた

最近、本を読んでいない

ということらしい