新緑の気配

特別なミドリが
芽吹く頃
風はやや強く吹く
やや強く吹いたあと
雲が覆って
雨が降る
雨は見えない草木を濡らし
そこにあった秩序を濡らす
そしてやや強く風が吹く
やや強く吹いた風で
ヒノヒカリが注ぐ
ぽたぽたと染み入るように
まだ見ぬ文明を色濃く浮かび上がらせる
新たなミドリが生きるころ
暴動が鎮まり
作家は筆をとる
言葉ではおさまりきらないと知っていても
やめることなどできない
わたしたちは
いつでもひたすらに
たべることに必死だ
次の雨はいつだろうか
ヒノヒカリにうつるミドリは
透き通るだろうか
落ちてくる一滴を
受け止めようと
空を見上げた
立ち止まればそこは
いつでも堂々たる大地だった
水の音が聞こえる
わたしの耳にもたしかに聞こえる