わたしが失われていくとき

左胸の奥あたりがぎゅっと収縮し
頭の深くから目の裏側にかけて暗く重くなり
やがて呼吸が乱れて
唇を何度も舐める
指は意識とは別に小刻みに震え
暑さや寒さはなくなってしまう
奥にあったものが
体全体を包み込むように広がり
目の前は真っ暗になってしまう
口の渇きはもはやとれない
唾を飲むことが最大の抵抗になり
発する声は強弱もなく
粗雑に放たれていく
まるで朽ち果てた木のように
表情の認識はもちろん存在しない
ただ大地に引っ張られているだけで
そのとき存在は複数あって
ひとつしかないのだ