暗くなる

暗い

窓辺なのに

目玉が

まるきり乾いてしまったみたいだ

蝉の片羽が

道に染み付いて剥がれない

それは見えるけれど

とにかく暗い

見上げれば

成長しすぎた杉の木やら

桜の木やらが

覆いかぶさろうとしている

そこに陽の抜ける隙間は

ないように見える

暗い

窓辺で本を開き

ときおりビールで

口を湿らせて

それでもまだ暗い

文字が見えたり見えなくなったり

そのまま目玉がずる剥けそうだ

もっともっと暗くなる

東京あたりの駅も

その近くの路地裏も

車のエンジン音が

やけに遠い時間帯