時間錯誤

おくれないように
わたし
はしって向かっています
照りつける日差しをもろともせずに
ときおり踵をならしながら
軽自動車の風圧で
飛ばされそうで
熱で茹だりそうで
わたしはインゲンほど
緑色が濃くはならないよ
信号が赤になる
田んぼのひろがる
風景が遠くに感じる
古びた電車のつり革
揺れすぎる車両
はしってもはしっても
簡単には届かない
いつかの記憶のなか
信号が青に変わる
時計を見る
おくれないように
なにごとも
おくれないように
きにしないように
車より人より
建物より時間より
いつでも止まれるじぶんが
少しこわくて
おくれないように
わたし
はしってむかってます