簡易な方法による複雑な想像の整理

音のしない風鈴が揺れている
月のうえで知らない女が尻もちをつき
唐辛子の束を中年の男が抱えている
雑誌のうえで羽の生えた子供が
奇声をあげて走っている
紙袋をいくつか捨てて
歯ブラシを新しくした
枕の向きをかえて
窓を少しだけ開けた
音のしない風鈴が揺れている
ギターコードを知らない歌うたいと
酸味を知らないシェフ
幾つかの騒がしい映像と
幾つかの退屈な記憶
目に見えるものが
宙に浮き始めている
もう少しだけ簡易な方法で
もう少しだけ簡易な方法で
目を閉じるように解けていく
それぞれがそれぞれの速度で
目を閉じるように解けていく
想像は現実の少し前と
かなり後にあるという