千円札

丸皿の上に
千円札が置かれている
真ん中あたりに
折られてできた線が刻まれ
千円札は
置かれているというより
座っている風に見える
くたびれた上着を
確かめるように
からだに馴染ませて
街灯をひとつずつ越えていく
丸皿の上の
あの座っている千円札は
どこかで伸ばされてしまったのか
わたしの数字は
どこまであてはまり
いくつのゼロが重なっていくのだろう
きっと
ふりかえれば
いま越えてきた
街灯は消えている
どこまでも続く
ゼロの重なりのなかで
意味なく
握り潰したい
消えてしまいそうな夜に
壁によりかかってねむる
衝動の隅で