静止画

昨日の話し声が
放射状の呟きへと
変わっていき
それらの記憶が
石油ストーブのまえで
ちりちりと燃えている
丸椅子に積まれた
文字の羅列に
右手を置いて
やあ、また逢ったね。
と声をかければ
返事はないが
安堵する
安堵してから
息を吐いて
息は枕の上をまたぎ
彷徨いながら
部屋の見えない隙間へ
消えていった
あぐらをかき
細胞が躰から剥がれ落ちる
そのさまを眺めて
頭のなかはまた渦を巻き
渦が反対を廻ったとき
昨日を知っているひとは
もう誰ひとりとして存在しないと
感じるのだった
夜の鳴き声だけを頼りにして
わたしは徐々に
液体へと変わっていく
それはもう
何処でもない
静止した夜だった